「このショウガは風邪をひいている」。
先日、実家に帰ったおり、近所のショウガ農家さんからいただいたものを土産にもらった。
採りたて、立派なショウガ。土に埋もれたボトムはそれぞれ奔放なかたちをしているのに
赤から緑にかけて、お日様に近くなるに連れて規則正しく揃ってゆく。
両端が柔らかくて生で食べるのに適しているそうで、
真ん中は辛くて筋張ってるから漬けるといいのよと母が教えてくれた。
甘酢がいいかな、しょうゆ漬けの方がお茶漬けにも使えるし常備菜としては有効か、
なんて考えていると父が一言、
「このショウガ、風邪ひいたみたいだぞ」。
……なにそれ!?
なにやら村上春樹の小説に出てきそうなフレーズ(調教されたレタス、だっけか)。
偏頭痛持ちのパプリカ、過食気味のカボチャ、風邪っぴきのショウガ。
8月にちょっと寒波が訪れた際に、件のショウガたちは風邪をひいてしまったそうだ。
お気の毒に。ぽかぽか素材が風邪ひいちゃ世話ないな、なんて意地悪な思いもよぎりつつ、
持ち帰って食べてみたところで軽快な繊維質の歯ごたえと心地よい辛み。
ショウガが風邪を引くとどうなるんだろう。
ショウガ農家さんは毎日毎日、何年もショウガと向き合ってきたから
「おっ、急に辛みがたったな」とか「風味が落ちたぞ」「筋張ってるのかい」、
なんて天候によるわずかな違い、変化もわかるのかな。まさしくプロだ。
素人が鮮度云々、なんて話すのとは次元が違うんだろう。
でも僕はショウガ素人だからとりあえず、今ある風味と辛みを堪能します。
味噌で、漬け物で、生姜焼きで。ショウガはちみつもいいな。
12 October 2012 | blog